
インプラント治療を検討していると、「自分は治療を受けられるのか」「向いていないと言われたらどうすれば良いのか」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
インプラントは失った歯を補う治療法のひとつですが、外科手術を伴うため口内の状態や全身の健康状態によっては慎重な判断が必要です。
ただし、治療が「難しい状態」と「できない状態」は同じではありません。事前の治療や生活習慣の見直し、骨造成などによって、インプラントを検討できる状態に近づけられる場合もあります。
本記事では、具体的にどのような人がインプラントに向いていないのか、治療が難しい時にどのような別の選択肢があるのかを整理していきます。
改めて、インプラントとは

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付けて咀嚼機能を回復する治療です。
人工歯根は上顎または下顎の骨に外科手術によって埋め込まれ、骨と結合することで人工歯を支えます。1本あたりから治療が可能で、ブリッジのように両隣の健康な歯を削らずに済むことが特徴です。
ただし、安全に治療を進めるためには、インプラントを支えられるだけの顎の骨があること、歯周病などの口内トラブルが無いこと、手術後の治癒能力に問題がないことが基本条件となります。
インプラントが向いてない人とは

インプラントが向いていない人は、治療や手術に対してリスクがある人、あるいは治療後にインプラントを維持することが難しい人が該当します。
具体的には、次のような人が代表例として挙げられます。
- ①糖尿病などの全身疾患がある人
- ②歯周病が進行している人
- ③顎の骨が不足している人
- ④喫煙習慣のある人
- ⑤歯磨きや定期検診が続かない人
- ⑥未成年や妊娠中の人
①糖尿病などの全身疾患がある人
糖尿病などの全身疾患がある人は、インプラント治療前に健康状態を再確認する必要があります。
高血糖や血糖コントロールに問題がある状態では、歯周病が進行しやすくなったり、手術後の感染や治癒の遅れに繋がったりする可能性があります。
ただし、糖尿病だからインプラントが必ずできないわけではありません。重要なのは、血糖値やHbA1cが安定しているか、合併症があるか、服薬状況に注意点があるかを確認することです。
心疾患、骨粗しょう症、免疫に関わる病気、血液をサラサラにする薬を使っている方も、手術時の出血や感染、治癒に配慮が必要になります。
相談時には、病名だけでなく、服用中の薬、通院中の診療科、直近の検査結果を伝えましょう。歯科医師だけで判断しにくい場合は、主治医と連携しながら治療時期や処置内容を決めることが大切です。
②歯周病が進行している人
歯周病が進行している人は、インプラント治療の前に歯周病治療を優先する必要があります。
歯周病は、歯茎のみならず歯槽骨にも影響する病気であり、炎症が進むと歯を支える組織が破壊され、最悪の場合は抜歯に繋がることもあります。
当然ですが、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む治療になるため、歯周病がある状態では安定性やメンテナンス面で大きなリスクが残ります。
特に、歯茎から出血する、歯がぐらつく、口臭が強い、歯石が多い、歯周ポケットが深いと指摘されたことがある方は、先に歯周病の検査と治療を受けるようにしましょう。
③顎の骨が不足している人
顎の骨の高さ・厚みが不足している人は、そのままではインプラントを安定させるのが難しくなります。
家を建てる時の基礎工事と同じで、土台となる地盤が弱ければ、どんなに立派な柱を立ててもすぐにグラグラしてしまいます。特に歯を失ってから長期間そのままにしていた方や、歯周病で骨が減っている方は注意が必要です。
顎の骨が少なくなる原因には、抜歯後の骨の変化、進行した歯周病、合わない入れ歯による負担などがありますが、骨が不足している場合でも後述の「骨造成」や「骨再生治療」によって、インプラントを検討できる状態に近づけられるケースもあります。
④喫煙習慣のある人
喫煙習慣がある人は、インプラント治療のリスクが高くなりやすいため注意が必要です。
タバコは血流や傷の治りに影響し、手術後の治癒を遅らせる要因になります。インプラントは骨との結合が重要な治療であるため、喫煙習慣の有無は治療計画を立てる上でも考慮すべき重要事項です。
事実、2021年にスウェーデンの大学が行った分析では、喫煙者のインプラント失敗リスクは、非喫煙者と比べて約2.4倍高いと報告されています。
喫煙者=治療不可ではありませんが、禁煙は前向きに検討したい内容です。なお、本数を減らすことでも一定の効果が期待できますが、治療後の長期的なメンテナンスも踏まえると禁煙が理想ではあります。
参考:Smoking and Dental Implants: A Systematic Review and Meta-Analysis
⑤歯磨きや定期検診が続かない人
歯磨きや定期検診が続かない人は、インプラント治療後のトラブルが起こりやすくなります。
インプラント自体は虫歯になりませんが、周囲の歯茎や骨は炎症を起こすことがあります。特に日々の歯磨きが不十分だと、インプラント周囲に歯垢が残り「インプラント周囲炎」の原因になります。
特に注意したいのは、治療後のメンテナンスです。ある研究では、定期メンテナンスを受けていた人のインプラント周囲炎発症率が18.0%だったのに対し、受けていなかった人では43.9%だったことが報告されており、治療後に定期検診を続けられるかどうかも重要であることがわかります。
仕事や家庭の都合、あるいは身体的な都合で定期通院が難しい方は、治療前にメンテナンス頻度や通院頻度をよく確認の上、続けられそうか判断する必要があります。
⑥未成年や妊娠中の人
未成年や妊娠中の人は、インプラント治療の開始時期を慎重に決める必要があります。
まず未成年の場合、顎の骨が成長段階にある場合があります。成長途中でインプラントを入れると、周囲の歯や顎の変化に対してインプラントだけが自然に移動しないため、噛み合わせや見た目に影響する可能性があります。
妊娠中の人については、基本的に出産後までインプラント治療を待つのが無難です。インプラントは緊急性の高い治療ではなく、むしろ手術・CT撮影・麻酔・抗生物質や痛み止めの使用・術後の腫れや感染リスクを伴うため、出産に少なからず影響を及ぼす可能性があります。
未成年や妊娠中の方は、今すぐインプラントを入れることにこだわらず、適切な時期まで仮歯や入れ歯などで補う方法もあります。将来的にインプラントを検討したい場合は、現在の年齢、成長の状態、妊娠週数、出産後の通院見通しを含めて相談しましょう。
インプラントができないと言われた場合の代替案

インプラントができないと言われた場合の代替案は、次のとおりです。
- 骨造成
- ブリッジ
- 部分入れ歯・総入れ歯
- 歯牙移植
骨造成
顎の骨不足が原因の場合、骨造成が選択肢になります。
骨造成は、インプラントを固定するために不足している骨を補う治療です。抜歯後に骨が痩せている場合、歯周病で骨が減っている場合、上顎の奥歯で骨の高さが足りない場合などに検討されます。
骨造成には、部分的に骨を補う方法や、上顎洞に近い部分で骨を増やす方法などがあります。症例によっては人工骨や自分の骨を使い、骨ができるまで一定期間待つ必要があります。
追加費用がかかり、治療期間も長くなる傾向がありますが、骨不足が理由で断られた方にとって、インプラント治療が受けられる可能性のある治療であるため、検討の余地は大いにあります。
ブリッジ
失った歯の両隣の歯を支えにできる人は、ブリッジを検討することができます。
ブリッジは、失った歯の部分に人工歯を入れ、周囲の歯に固定して咀嚼機能を補う治療方法です。固定式のため取り外しの手間がなく、条件が合えば比較的違和感を抑えやすい方法でもあります。
ブリッジのメリットは、インプラントのように顎の骨へ人工歯根を埋め込む必要がない点です。全身疾患や骨量の問題でインプラントが難しい方でも、周囲の歯の状態が良ければ選択肢になります。また中には保険適用できる装置もあるため、費用を抑えたい方にも検討しやすい治療です。
一方で、支えになる歯を削る必要がある点には注意が必要です。両隣の歯が健康な場合、その歯に負担をかけることになります。また支えの歯に虫歯や歯周病が起きると、ブリッジ全体の作り直しが必要になる場合があるため、こちらも定期メンテナンスが不可欠となります。
部分入れ歯・総入れ歯
複数の歯を失っている人は、部分入れ歯や総入れ歯を検討できます。
入れ歯の利点は、取り外しが可能で洗浄がしやすく、保険診療で作れるタイプもあることです。持病や骨量の問題でインプラントが難しい方でも選びやすく、治療範囲が広い場合にも対応しやすい方法と言えます。
一方で、入れ歯は慣れるまで違和感を覚えやすく、痛みや外れやすさを感じることもあります。合わない入れ歯を使い続けると、口内炎や噛みにくさに繋がる場合もあるため、毎日の清掃と定期的な調整が必要になります。
歯牙移植
条件が合う人は、歯牙移植(しがいしょく)を検討できる場合があります。
歯牙移植は、親知らずなど自分の歯を、歯を失った部分へ移す治療です。人工物を埋め込むインプラントとは異なり、自分の歯を利用できる点が特徴です。
ただし、歯牙移植は誰でも受けられる治療ではありません。移植に使える歯があること、移植先の骨や歯茎の状態が整っていること、歯の大きさや形が移植先に合うことが必要です。また移植後に根管治療が必要になることもあり、歯根吸収や癒着などのリスクも考えなければなりません。
主に若い方や親知らずが残っている方が対象になりますが、歯牙移植を希望する場合は、レントゲンやCTで移植に使える歯の有無を確認し、インプラント、ブリッジ、入れ歯と比較した上で総合的に判断しましょう。
まとめ:まずは医師と相談しましょう

インプラントが向いていない人に当てはまっても、すぐに治療を諦める必要はありません。
糖尿病などの全身疾患、進行した歯周病、顎の骨不足、喫煙習慣、セルフケアや定期検診の継続が難しいこと、未成年や妊娠中といった事情は、治療可否を慎重に判断するための要素です。
とはいえ、実際の治療可否は、一人ひとり異なります。歯周病治療や禁煙、持病の管理によってリスクを下げられる場合もあれば、骨造成によってインプラントを検討できる状態に近づけられる場合もあります。
大切なのは、「できない」と言われた理由を把握すること。骨が足りないのか、歯周病が残っているのか、全身疾患の管理が必要なのかによって、次に取るべき対応は変わります。
まずはCT検査やカウンセリングで現在の状態を確認し、インプラント、骨造成、ブリッジ、入れ歯、歯牙移植のどれが自分に合うのかを医師と相談してみてください。
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