
20代にして事故や虫歯などで歯を失ってしまった場合、その後の治療法としてインプラントを検討する方は少なくありません。しかし、「20代でインプラント治療を受けるのは早すぎるのではないか」「費用やリスクが心配」といった不安を感じることもあるでしょう。
この記事では「20代でインプラント治療を検討している方」に向け、治療の可否やメリット・デメリット、費用、そして長期的にインプラントを維持するための注意点について詳しく解説します。
20代のインプラントは可能だが条件付き
結論から言えば、20代でもインプラント治療を受けることは可能です。
一般的に20代の歯槽骨(顎の骨)は健康で厚みや骨密度も十分あり、骨移植などの追加処置が不要なケースが多いとされています。また、20代は体力や免疫力が高いため、手術後の回復が早く感染症のリスクも低い傾向があります。ただし、注意すべき重要な条件が1点あります。
それは顎の骨の成長が完全に終了していることです。顎の骨がまだ成長段階にある20歳前後にインプラントを埋め込むと、その後の成長によってインプラントの位置がずれたり噛み合わせに問題が生じる恐れがあります。
なお、顎の成長が終わるのは18歳前後と言われていますが、20代であっても顎の成長が完了していない場合はインプラントは推奨されません。したがって、まずは歯科医に骨の成長状態を確認してもらい、この条件を満たした上で治療計画を立てることが大切です。
20代のインプラント割合
出典:令和6年 歯科疾患実態調査 / 令和4年 歯科疾患実態調査|厚生労働省
20代でインプラント治療を受けている人の割合は多くはありません。
そもそも20代で歯を失う人自体が非常に少なく、厚生労働省「令和6年 歯科疾患実態調査」によれば15〜29歳では永久歯の喪失経験者は1%にも満たない状況です。ゆえに20代では歯を失うケース自体が稀なため、インプラントが必要になる人もごく限られています。
実際、20代のインプラント割合について厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査」によると、調査対象となった20〜24歳ではインプラント装着者は0%、25〜29歳でも2.6%に過ぎませんでした。これは高齢層(例:70〜74歳で5.9%)と比べて低い水準です。
以上のように、統計上も20代のインプラント経験者は少数派ですが、裏を返せば「20代でインプラントが全く無いわけではない」ことも読み取れます。歯を失った20代の方も一定数存在し、その中でインプラント治療を選択している人がわずかながらいるというのが現状です。
20代のインプラントにおけるデメリット
インプラント治療は多くのメリットがある一方で、特に20代の方が受ける際には特有のデメリットや慎重に考えるべき点が存在します。具体的には、下記のようなデメリットです。
- 高額な治療費が必要
- 外科手術が必要
- 長期的なメンテナンスが必要
高額な治療費が必要
インプラント治療における最大のデメリットは、高額な治療費です。
インプラントは公的医療保険が適用されない自由診療であり、治療費は全額自己負担となります。その金額は歯科医院や症例によって異なりますが、日本口腔インプラント学会の調査では1本あたり平均約30〜55万円前後になると報告されています。
20代は学生や社会人になったばかりで経済的基盤が安定していないことが多く、さらに人によっては奨学金の返済等もあるため、数十万円の出費は治療を決断する際に大きなハードルとなります。
なお、費用負担を軽減する方法としては、高額医療費になった場合に確定申告で医療費控除を受けることで一部税金が戻ってくる制度があります。いずれにせよ事前に治療費の見積もりをよく確認し、無理のない計画を立てることが重要です。
外科手術が必要
インプラント治療は歯茎を切開して顎の骨に穴を開け、人工歯根を埋め込む外科手術を伴います。手術である以上、身体的な負担は避けられず、術後には「ダウンタイム」と呼ばれる回復期間が必要です。
回復期間には個人差がありますが、通常は術後2日から3日後をピークに1〜2週間ほどで徐々に落ち着いてくる傾向にあります。ただし、この回復期間中は日常生活にも制限が生じます。
例えば、出血や痛みの原因となる激しい運動・長時間の入浴・飲酒などは術後1週間程度は控える必要があり、食事もしばらくは患部に負担をかけないよう、柔らかいものを中心に摂ることが推奨されます。
また、ごく稀にではありますが、インプラントが骨と十分結合せずに安定しないケースが起こる可能性もあります。万一トラブルが発生した場合には追加処置や治療期間の延長が必要になることもあるため、手術前には歯科医と十分に相談し、リスクと対策について納得した上で治療に臨むことが大切です。
長期的なメンテナンスが必要
インプラントは一度治療が完了すれば終わりではなく、生涯にわたるメンテナンスが不可欠です。
インプラント自体は人工物なので虫歯にはなりませんが、周囲の歯茎は天然の歯と同様に歯周病によく似た「インプラント周囲炎」という病気になるリスクがあります。この病気が進行すると、インプラントを支える顎の骨が溶けてしまい、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
これを防ぐためには毎日の丁寧な歯磨きといったケアに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスの頻度は一般的に3〜6ヶ月に1回が目安とされていますが、20代でインプラント治療を受けるということはこの先、非常に長い期間このメンテナンスを継続していくことを意味します。
毎回のメンテナンスにも費用がかかり、1回あたり3,000円〜10,000円程度が目安とされています。このように長期的なランニングコストが発生することも予め理解しておくことが重要です。
インプラントの寿命
一般にインプラントの平均的な寿命(耐用年数)はおよそ10〜15年程度と言われています。ただし、これはあくまで平均であり、適切なセルフケアと定期メンテナンスを怠らなければ20年以上問題なく使えているケースも珍しくありません。
事実、日本口腔インプラント学会のアンケート調査では20年以上経過しても77%以上の人が「特に問題なく使えている」と回答しており、インプラントの10年後生存率は90〜95%前後とされています。海外の長期研究でも15年後で約93%、20年後でも85%以上が維持できたとの結果が報告されています。
もちろん年月とともに部品の劣化や周囲組織の変化でトラブルが起こるリスクは少しずつ高まりますが、適切に管理すれば相当に長持ちする治療法であることは確かと言えます。インプラント自体も年々進歩しており、適切な素材選択と術式、そして何より術後のケア次第で寿命を延ばすことも十分可能です。
20代のインプラントにおける注意点
20代でインプラント治療を成功させ、長期的に快適な状態を維持するためには、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。これらは治療を受ける前の準備から、治療後の生活に関わることまで多岐にわたります。
- 自分の歯の状態を把握しておく
- 費用を確認する
- メンテナンスの必要性を理解しておく
- リスクについて知っておく
自分の歯の状態を把握しておく
まず最も重要なことは、歯科医師による正確な診断を受けることです。
前述の通り、20代でのインプラント治療の絶対条件は、顎の骨の成長が完了していることです。自己判断はせず、必ずレントゲンやCTなどの精密検査を受け、治療が可能かどうかを客観的に評価してもらう必要があります。
また、インプラント治療は残っている他の歯や歯茎が健康であることが重要です。既に虫歯や歯周病がある場合はインプラント治療の前にそちらの治療を優先し、先に口腔内全体の環境を整えることが必要になります。
費用を確認する
前述のとおり、インプラント治療には高額な費用がかかります。治療を始めてから「こんなに費用がかさむとは思わなかった」とならないよう、事前に見積もりをもらい費用総額を把握しておきましょう。
インプラント本体の費用だけでなく、検査代・手術代・上部構造(被せ物)代・通院回数分の診療費など、総額でいくらになるのかを確認することが大切です。全国的な相場としては1本あたり30〜55万円前後が一般的ですが、地域や歯科医院によって開きがあります。
そして、治療費の負担を軽減できる制度があることも併せて知っておくべきです。インプラント治療は失われた歯の機能回復を目的とする医療行為であるため、美容目的の治療とは異なり「医療費控除」の対象となります。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い方)を超えた場合に確定申告を行うことで所得税の一部が還付され、翌年の住民税が減額される制度です。この制度により実質的な費用負担を数万円〜十数万円程度軽減できる可能性があります。
また治療費の支払いにはデンタルローンを利用することも可能で、ローンで支払った場合も医療費控除の対象となります。会社員の場合、会社の年末調整では手続きできないため、自身で確定申告を行う必要がありますが、経済的負担を減らせる点では検討の余地があります。
メンテナンスの必要性を理解しておく
インプラントを長持ちさせるには、治療後のメンテナンスを継続していく必要があります。
メンテナンス不足や喫煙などはインプラントの寿命を縮める大きな要因であり、毎日のセルフケアはもちろん、歯科医院での定期検診を欠かさず受けましょう。定期検診ではインプラント周囲の歯垢・歯石を除去してもらえる他、噛み合わせのチェックやインプラントの緩みがないか確認してもらえます。
20代のうちは多忙で自己管理がおろそかになることもありますが、せっかく高い費用をかけて入れたインプラントを長く使うためにも、一生にわたるメンテナンスが必要だという意識を持ちましょう。
リスクについて知っておく
インプラント治療に伴う様々なリスクについてもしっかり理解しておきましょう。一般的には下記が挙げられます。
- 痛み、腫れ、出血などの後遺症
- インプラント歯周炎などの感染症
- 金属アレルギー
- 生活習慣によるインプラントの短寿命
- 骨密度、骨量不足による抜け落ち
- 手術ミス
ただし、これらは十分なカウンセリングと安全第一を考慮した施術、アフターケアで大抵のリスクは回避できます。それゆえにインプラント治療に実績のある医院を選び、不安な点は遠慮せず担当の歯科医に質問するようにしましょう。
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