
インプラント治療を終えたばかりの方はもちろん、これからインプラント治療を検討されている方についても、治療後のメンテナンスについて気になる点があるのではないでしょうか?
インプラントを長く使い続けるためには歯科医院でのメンテナンスが欠かせませんが、具体的にどれくらいの費用や時間がかかるのか、どのような内容なのか、疑問や不安は絶えないかと思います。
本記事では、メンテナンスで行う内容をはじめ、メンテナンスを受けない場合のリスク、費用相場と保険適用、通院頻度などについて、わかりやすく解説します。
インプラントのメンテナンスでは何をする?

インプラントの治療後には「定期的なメンテナンス」が必要になりますが、具体的にメンテナンスでは何をするのでしょうか?
主にメンテナンス内容として、以下の4つがあります。
- 口腔内チェック(虫歯・歯周ポケット・噛み合わせ等)
- インプラントの状態チェック
- 歯石除去・クリーニング
- ブラッシング指導
口腔内チェック(虫歯・歯周ポケット・噛み合わせ等)
口腔内チェックでは、いわゆる口の中の健康状態チェックが行われ、虫歯の有無や歯周ポケットの深さ、噛み合わせに問題がないかなど確認します。
インプラントは周囲の歯や組織と連動して咀嚼機能を果たしており、周辺の歯が歯周病等になると、その原因菌がインプラントにも悪影響を及ぼすリスクが高まります。
普段から入念に歯磨きをしても歯石が残っていることが多いものですが、歯科医師による定期チェックを行えば、自分では気付けない深部の炎症などを早期発見し、病状の進行を未然に防ぐことができます。
インプラントの状態チェック
インプラントの状態チェックでは、文字通りにインプラント本体が良好な状態であるか確認します。
具体的には、歯ぐきの発赤や出血、歯周ポケットの深さ、排膿の有無、上部構造やネジの緩み、必要に応じたレントゲン撮影を行って骨の状態なども確認します。
日本口腔インプラント学会・日本歯周病学会の学会見解でも、BOP、排膿、エックス線検査、動揺の確認がメンテナンス項目として挙げられており、いずれも異常の早期発見で重症化を防ぐことが目的とされています。
歯石除去・クリーニング
天然歯の定期健診と同様に、インプラントのメンテナンスでも歯石除去やクリーニングが行われます。
歯石除去やクリーニングの目的は見た目を綺麗にするためだけでなく、インプラント周囲に付着した歯垢やバイオフィルムを減らし、炎症のきっかけを取り除くために行います。
前述のとおり、入念に歯磨きをしているつもりでも落としきれない汚れは少なくないため、歯科医院での専門的な清掃は想像以上に効果があり重要です。
実際にメンテナンスを継続した患者の方が、受けなかった患者よりもインプラント周囲炎の発症率が低かったとする国内報告もあり、定期的なケアがいかに重要かわかります。
ブラッシング指導
こちらも天然歯の定期健診と同じように、ブラッシング指導が行われます。
歯並びは人それぞれ異なり、また歯磨きの癖も人それぞれ異なります。こういったことを個々人の違いを踏まえて、歯垢が残りやすい場所や歯磨きが不十分な場所の説明、さらに力の入れ方など正しいブラッシング方法の説明も行われます。
インプラントの維持は定期メンテナンスのみならず、毎日のセルフケアも非常に重要であるため、自己流のままにせず、その都度見直す意味があります。
インプラントをメンテナンスしないとどうなる?

「インプラントのメンテナンスが大変」という声もよく聞かれますが、メンテナンスをせず放置したらどうなるのでしょうか?
結論として、主に次のようなリスクに陥る可能性が高まります。
- インプラント周囲炎のリスク
- 虫歯のリスク
- インプラントの破損・脱落リスク
- 保証が無効になるリスク
インプラント周囲炎のリスク
最も懸念されるのが、インプラント周囲炎。平たく言えば、インプラント版の歯周病です。
天然歯には細菌の侵入を防ぎ、血流を通じて免疫細胞を送る「歯根膜」という組織がありますが、インプラントにはこの免疫機能がありません。そのため、一度炎症が起こると天然歯の歯周病とは比較にならない程のスピードで進行し、インプラントを支える顎の骨が急速に溶かされてしまいます。
日々の予防が重要になりますが、メンテナンスなしでは早期発見が難しく、最悪の場合はインプラントの喪失に繋がる場合もあるため注意が必要です。
虫歯のリスク
インプラント自体は虫歯になりませんが、周囲の天然歯は普通に虫歯になります。
特にインプラント周辺は構造的に複雑で磨きにくい部分が増え、磨き残しが増える傾向にあります。当然ながら、磨き残しによって歯石が溜まれば虫歯や歯周病が進行し、結果として、インプラントにも悪影響を及ぼす恐れがあります。
こちらもメンテナンスによる早期発見と対策が重要ですが、セルフケアのみでは虫歯や歯周炎に気付けないケースが多いのが実情です。
インプラントの破損・脱落リスク
噛み合わせの変化によって、インプラントの破損や脱落を招く可能性が高まります。
人間は加齢とともに骨の状態が少しずつ変化するため、治療直後は完璧だった噛み合わせも数年経過すると必ずズレが生じます。このズレがインプラントに局所的かつ過剰な力を加わえる原因になる場合があり、セラミックが欠けたり、内部の連結ネジが緩んで破折したりするケースがあります。
骨の変化、口内の変化に合わせてインプラントも適宜調整するのが基本です。ゆえにメンテナンスなしでは、これらの変化に対応できずリスクが増すことを念頭に置いておきましょう。
保証が無効になるリスク
インプラントには、メーカー保証として5〜10年ほどの保証期間が設けられています。
具体的には、インプラントの不具合が原因で脱落などのトラブルが起きた場合、患者の自己負担なく、新品のインプラントに交換ができる、といった内容のものになります。
ただし、保証適用は定期メンテナンスを受けている場合に限ることが一般的です。言うまでもありませんが、メンテナンスを怠ったことによる不具合は患者の過失に該当するため、保険適用が難しくなります。
インプラントのメンテナンス費用はいくら?保険適用できる?

インプラントのメンテナンス費用の相場は、1回あたり3,000円〜5,000円です。高くても、10,000円以内に収まる傾向にあります。
保険適用の可否については、残念ながらメンテナンスも自由診療に該当するため、基本的に費用は自己負担です。ただし、インプラントの状態確認のみならず、天然歯の虫歯や歯周病のチェックをする場合は保険適用になります。
また、メンテナンス費用を含め1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、確定申告を行うことで「医療費控除」の対象となり、所得税の還付で実質的な自己負担額を抑えることも可能です。
インプラントのメンテナンス頻度は?

一般的なインプラントのメンテナンス頻度は、3〜6ヶ月に1回が基本の目安です。
ただし、これはセルフケアが良好で口内に問題がない場合に限ります。歯周病の既往歴や喫煙習慣がある場合については、1〜3ヶ月に1回など頻度を増やすことが推奨されます。
このように患者ごとの口内状態や生活習慣によってメンテナンス頻度は異なりますが、いずれにせよインプラントを長く使い続けるために継続した通院が大切です。
インプラントのメンテナンスは他院でもできる?

インプラント治療を受けた医院とは違う歯医者でメンテナンスを受けることも可能ですが、いくつか注意点があります。
引っ越しなどで最寄りの歯医者に通院できなくなるケースや、長期の出張でかかりつけ医に見てもらえないケースなど、やむを得ない事情で転院を希望される患者も少なくありません。現在では、多くの歯科医院が、他院で埋入したインプラントのメンテナンスも受け入れています。
しかし、インプラントは様々なメーカーが存在し、それぞれのメーカーごとに使用する専用の医療器具や連結ネジの規格が全く異なります。そのため、転院先の医院がご自身のインプラントメーカーの規格に対応していない場合、言うまでもなくメンテナンスを受けることが難しくなります。
そのため、現在埋入されているインプラントの正確なメーカー名や製品の種類が記載された「インプラント保証書」などを事前に用意・持参することが重要です。
また、転院によって元の医院で契約していた長期保証が適用外となってしまうケースがほとんどであるため、独断で転院を決める前に、必ず現在のかかりつけ医に今後の対応や紹介状の作成についてご相談いただくことを強くお勧めします。
インプラントのセルフケア方法

インプラントを長持ちさせるためには、歯科医院でのメンテナンスと合わせて、ご自宅での毎日のセルフケアが極めて重要です。ここでは、正しいセルフケア方法のポイントを解説します。
- 丁寧なブラッシング
- 研磨剤なしの歯磨き粉を使用する
- 減煙・禁煙をする
丁寧なブラッシング
セルフケアの基本は、丁寧なブラッシングです。
具体的には、歯と歯ぐきの境目、インプラントと天然歯の境目を小刻みに磨くこと。歯ブラシのみならず、隙間が小さい場所にはデンタルフロス、逆に広い場所には歯間ブラシを併用することも効果的です。
ブラッシング後はデンタルリンス(マウスウォッシュのような口内洗浄液のこと)も有用です。歯と歯茎の隙間に作用する洗浄液であり、使い続けることでインプラント周囲炎の予防効果があります。
研磨剤なしの歯磨き粉を使用する
歯磨き粉は、研磨剤が含まれていないものが推奨されます。
現在市販されている多くの歯磨き粉には、天然歯の表面についた色汚れを削り落としてツヤを出す目的で細かな研磨剤が含まれています。
しかし、インプラントに使われているセラミックやチタンといった素材は、天然歯のエナメル質とは性質が大きく異なるため、研磨剤や顆粒入りの歯磨き粉を使用し続けると、表面に目に見えない微細な傷をつけてしまう恐れがあります。
減煙・禁煙をする
喫煙習慣がある方は、減煙・禁煙が強く推奨されます。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと強く結合し、全身レベルでの酸素不足を引き起こします。これにより白血球の働きが弱まり免疫力が低下するため、細菌感染に対する抵抗力が落ち、インプラント周囲炎を招きやすい脆弱な口腔環境が作られてしまいます。
有害物質が少ないとされる加熱式タバコや電子タバコであっても、ニコチンが含まれている限り血流悪化などの悪影響が避けられません。インプラントを生涯長持ちさせるつもりであるなら、歯科医師の指導のもと禁煙に取り組むことも重要なセルフケアの一環となります。
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